会話のギヤチェンジ

企業で長年働いてきた人で、「人と話すのは好きだし、プレゼンもうまい。役職にもついて、部下を何人も育ててきた。だから私はコミュニケーションが得意な方だ」と言われる方がおられます。
そういう方が、傾聴も簡単にできると思ってやってみるとうまくいかず、壁にぶち当たってしまいます。

普段の日常会話の中には、『出来事』に関する情報と『感情』に関する情報がありますが、職場での会話は、『出来事』中心になっていることが多いと思います。

成果主義が広まり、人と人の結びつきがドライになるに連れて、『出来事』しか汲み取られず、
『感情』は無視されることが多くなってきていると思います。


例えば、「外回りが長引いちゃって、やっとのことでこの提案書を作ったんだ。」と同僚が話しかけてきた時、「先日、部長に指摘されたポイントは全部反映したの?」などとクール?に応じていないでしょうか。
これでは、『出来事』を理解しただけで、話し手の『感情』は受け止めていません。

職場での会話が『出来事』中心になる理由は沢山あります。
『忙しい。一々、感情を聴いている暇がない』、『感情的になると、大人じゃないと思われる。』、『感情を殺して、ロジカルに話すとカッコいい』等など。
傾聴の場での「その時のお気持ちを、もう少しお話いただけますか」といった会話とかなり違いますね。

コミュニケーション能力とは、本来、人の話を聴くときに、『出来事』と『感情』の両方をちゃんと聴ける力です。
例えば、子供が塾から帰ってきて、「ただいま!お腹減った~」という言葉には、空腹で帰宅したという『出来事』だけでなく、『僕は頑張ってきたので、ねぎらって欲しい』という『感情』も含まれています。
そこで、親は子供の『感情』も察知して、「お疲れー、すぐご飯だから待ってねー」と言ったりします。

職場ではコミュニケーションがうまいと思っている人も、実は、自分のコミュニケーション力は低いんじゃないかと疑ってかかる必要があると思います。
そして、自分がこれから行う会話のタイプに合わせて、ギヤチェンジすることを意識することが必要だと思います。